小さな村の大きな話



とりあえず、上がってもらった


「いや、別に上がるほどの用じゃないんだけど」


「いや、まぁ、…はい」


「とりあえず回覧板」


「あ、ありがとうございます。
あ、紹介するね、大和君。
で、こっちが同じクラスの檜山さん」


「…よろしくお願いします」


「…どうも」




……もしかして、二人面識あった??



「で、おにーさん、何でそんな怖い顔してるんですか」


「別に、とりあえず紅茶かコーヒーどっちがいい??」


「紅茶もコーヒーも飲めないし、長居する気もないのでどうぞ、お構いなく」



二人の空気がすごく悪い…
この短時間でなんでこんなに険悪になれるの??
なんとなく気まずくなって回覧便をパラパラめくる。



「その、右上に印のあるものは各家庭1枚づつ取るの。
それ以外は読んだら自分の名前のところにチェック入れて」


「はい」


「あと、大家さんが時間が合わなくて会費の徴収できてないって言ってたけど。」


「す、すみません」


「もし、この先も難しいようだったら家賃と一緒に引き落としでもいいってさ。
そのための書類がこれ。
これは一応大家さんのポストに直接入れてね、場所は知ってる??」


「ごめん、わからないです」


「じゃぁ、この書類ご家族と相談して決めて、もし出す事になったらうちに来て。連れてってあげる」


「えっと、檜山さんの家って…」


「隣よ」


「わかった」



すると、大和君がボールペンと印鑑を持ってやってきた。



「いいよ、今書く」


「はい」


「確か隣は“墨村”さんだったはずだけど??
檜山さん」


「えぇ、そうよ。でも、本田さんの家の表札も“壱原”さんだわ」



すっごい、空気悪い……
ど、ど、ど、どうしよう。
二人共今知り合ったんだよね!?!?
何、もともとの相性!?!?



「え、えっと、檜山さん!!!全部読めたよ!!」


「そう、じゃぁ、大家さん家に行こうか」


「待って、僕が行くよ。
りんちゃんはまだ外に出せない。
構わないでしょ??檜山さん」


「…わかりました」


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