小さな村の大きな話


ピーンポーン


「はい、墨村です」


「えっと、その…壱原です。隣の」



……
………
…………
ガチャ

ガンッ


……バッチリチェーンかけてる。
ま、当たり前か…あんなことしたんだもん…



「大家さんの家ならまた今度本田さんに教えるので今日はお引取りください」


「えっと、今日はその事ではなく… 
この間の事、謝りに来ました。」


「本田さんは??」


「もう学校に…」


「あ、そう」


「りんちゃん、バス停で一人だし
檜山さんあまり学校に来てないって聞いたので今なら家にいるかと…」


「学校には行ってる、授業に出てないだけ。
バス停で見かけないのは通学が原チャリだから。
もう学校行くから帰って下さい」


「あの、これだけは言わせて!!
本当に悪い事をしたと思ってる。
…申し訳ありませんでした」


「謝罪は受け止める。けど、許せるかどうかはわからないから」




「図々しいのは承知で、ひとつだけ聞くね。
りんちゃんを病院に連れてきてくれたあの日、病室で帰り際何か口止めをしてたよね??
あれは一体…」


「……あぁ…そういう事ね…。
あれ聞いて誤解したんだ。
別に、大したことじゃないです。
私が本田さんを送るとき、ノーメットで運転したから誰にも言うなって言っただけ。

あの時、メット1つしかなかったし。
そもそも私免許取って2年経ってないから二人乗りは、学校にバレると停学なんだよね。
私特待生で学費全額免除だから流石に停学はまずい。
停学は学費免除対象から外れるから退学しなくちゃいけなくなる」


「…じゃぁ、君はりんちゃんのために自分はヘルメットしないで…
しかも、停学の危険を犯してまで運んでくれたの…??」


「別に私がやろうと思ってやっただけで―


「そこまでしてくれた人に僕は……」



僕、最低だ……
人として、底辺の底辺じゃないか。
恩人になんて仕打ちを……




「ちょ、人ん家の前で膝から崩れ落ちないで。
って、ちょ…いい大人が泣かないでくれる!?!?
そういう事だから!!
わかったら帰って。いい加減遅刻する!!」


「……本当に申し訳ありませんでした」


「だから、土下座するな!!
近所の人から変な目で見られるでしょ!?!?」
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