小さな村の大きな話
無事書類を提出して家に帰ってくると、リビングに大和くんの姿はなかった。
靴はあるから、部屋だな…。
コンコン
「ただいま。大家さんに書類出してきたから。
あと、話があるからキリの良いところで出てきて」
すると、静かに大和くんは出てきた。
「…座って」
「はい…」
大和くんは静かにリビングの食卓へついた。
「…私が怒ってる理由、わかる??」
「檜山さんに…酷いことを…」
「それ、違うからね??」
「え??」
「樹ちゃんとはちゃんと話したよ。
私も樹ちゃんに罪悪感があったけど、それは樹ちゃんと大和くんの事情で、きっと私が首を突っ込む話じゃないんだね…」
「えっと…」
「意味、わかる??
私、口下手だから…ちゃんと伝わってるかな…??」
「多分、大丈夫」
「おんなじなんだよ。
私の事いじめてるのは咲座さん。
でもね、これは私と咲座さんの問題で、大和くんは介入しちゃいけないの。
だってそうでしょう??
私達は女子高生で大和くんは大人の男の人だよ??」
「…弱い者にいじめを働く時点でフェアじゃないって思って…僕は…」
「フェアじゃないの??
どうして??
私は弱い者なの??
なんで??」
「なんでって…」
「体が弱いから??」
涙が出てきた。
あんな言葉、大和くんから聞きたくなかったよ…。
「私も咲座さんも女子高生だよ??
ねぇ、何が違うの??
私は普通の女の子だよ!?!?」
「っ!!…ごめん……。
やっとわかったよ、どうしてりんちゃんが怒ってたのか…。
僕はりんちゃんの彼氏なのに…」
「彼氏と彼女でも踏み込まれたくない領域ってあるでしょ??
大和くんは私のそこに踏み込んで荒らした。
それも許なかったの」
「…ごめんなさい、本当に…ごめんなさい
僕とりんちゃんも、りんちゃんも咲座さんも、僕と檜山さんも…対等な人間なんだ。
僕は、それをわかってなかった」
「大和くんはね、お家で待っててくれればいいの。
家で、私に“おかえり”って言ってくれればそれだけでいいんだ」
私はゆっくり立ち上がって大和くんの後ろにまわると
ふわりと抱きしめた。
「ははっ、りんちゃんのほうが僕よりずっと大人だ」
「…泣かないの、男でしょ??」
「泣き顔もかっこいい、とかは言ってくれないの??」
「…もうっ!!」
たまにはいいかな……??
そっと大和くんの唇にキスをする。
「っ!?!?」
……照れてる。
私だってたまには困らせてやるんだから!!
「へへっ♪さ、夕飯にしようか!!」