小さな村の大きな話
「…とりあえず、キャラメルクラシックプリンで」
「本田さんは??」
「えっと、私甘いものは――
「これとこれは食べても大丈夫」
樹ちゃんが可愛いプリンと美味しそうなモンブランを指差した。
そこには砂糖、人工調味料不使用と書いてある。
「あら、もしかしてあなたも楓と同じなのかしら??」
「えぇ」
藤野さんのお母さんが尋ねると樹ちゃんが頷いた。
楓さん??同じってどういう意味だろう??
「楓はね、樹ちゃんのお母さんなの。
高校のとき同じクラスでね、心臓が悪い楓のために、楓でも食べれるスイーツを作ろう!!
って思ったのがこの店の始まり」
「そうなんですね」
「よく病院まで届けに行ったよね〜」
「あたしは小さかったから覚えてないけどね。
ちなみに、このキャラメルクラシックプリンは私の自信作!!」
「え、藤野さんが!?!?」
「奈穂でいいよ。
ここはみんな藤野さんだから(笑)」
「…じゃぁ、私も奈穂ちゃんのキャラメルクラシックプリンで」
「まいどー」
横の喫茶スペースに奈穂ちゃんが、プリンを3つ持ってきてくれた。
「あたしも食べる!!」
「「「いただきます!!」」」
実は私はプリンなんて数年ぶりに食べる。
最後に食べたプリンは決して美味しいとは言えなかったな…。
粉っぽいモサモサした味だった。
「何スプーン持って固まってるの??早く食べなよ」
「う、うん」
一口すくって口に入れた。
ふわっとキャラメルの風味が広がる。
でも、あんまり甘くない…。
なのに美味しい滑らかで……。
初めて食べた。こんな美味しいもの…。
―ポタッ――
「へ、本田さんっ??口に合わなかった??」
涙が出てきた。
美味しいのに、嬉しいのに……
違う。美味しくて、嬉しいから涙が出るんだ。
「グスッ…おい、しい……
すごく、おいしいよぉー!!」
「ふふっ、何も泣くことないのに…」
「だってぇー」
「本田さんっ!!」
奈穂ちゃんは私にぎゅうっと抱きついた。
「ちょ、奈穂ちゃん!?!?」
「ありがとう。
私のプリン…美味しいって言ってもらえて嬉しいっ!!」
「ほら奈穂、そろそろ離してあげなって」
「本田さんっ!!私誤解してたみたい!!
根暗ではっきりしないし、うじうじしてて正直うざいって思ってたけど
本当はよく話すし、笑うし、いい子だった!!
私とも仲良くして、本田さんっ!!」
「…やだ」
「…へ??」
「りんがいい。
…本田さんじゃなくて……りんがいい!!!」
「ちょっと、樹。
何なのこの可愛い生き物は。なんで私に紹介してくれなかったの!?!?」
「…落ち着け、奈穂」