小さな村の大きな話
さて、私も帰ろう。
「あれ??ポーチが…ない……??
昼休みにはちゃんとあったのに……!!」
あのポーチの中には薬が入ってる。緊急用の発作止め。
今日は理科室と体育館にしか移動してないっ!!
慌てて理科室に向かう。
「はぁっ、はあっ……ここじゃ、ない…。
なら……たい、いくか…ん…」
……重い身体を無理やり動かして体育館へと足をすすめる。
「はぁっ、はっ……あっ、た……」
体育倉庫の一番奥の跳び箱の上に置いてあった。
私はなんの疑いもなく体育倉庫の中に入っていった。
ガラガラ…。
ガシャンッ!!!
「っ!!!誰っ!!」
「本田さーん、聞こえるかしらー??」
「ふじ、はらさ…ん…??
どうして鍵を??開けてっ!!」
「あなた、生意気なのよね。
黎華さんに対して口の聞き方もなっていないし。
大体、余所者のくせに檜山さんにも馴れ馴れしくして。全くもって自分の立場を理解してないわ。あなたとは住む世界が違うのよ」
……また樹ちゃん………。
「樹ちゃんは、樹ちゃんだよ。
どうして??住む世界が違うって…どういう事……??」
「……あなた、まさか……。
村巫女様と生贄様の事、知らないの…!?」
「むらみこ、さま??」
「っ!!嘘でしょ…。まさか、聞いてない訳??
……ま、そうでしょうね。余所者のあなたに話すわけ無いわ。あれだけ一緒にいて全く信用されてないのね、あははっ、可哀想ー!!
………どっちにしろ同じ事だわ。知らなかろうがあなたはあのお二人を侮辱した。
ここでしばらく反省することね」
「え、ちょっ!!
開けてっ、開けて!!」
足音が遠ざかってく…。
せめて携帯を持ってくるべきだった……。
「…ううっ、いっつ!!」
あぁ、走ったから…。
薬、飲まなきゃ……。
「んっ………はぁっ…はあっ…」
すぐに落ち着いてきた。
さて、ここから出る方法を考えなくちゃ……。
「というか、よく考えたら馬鹿だよね…
私、体育倉庫なんて入ってないし。
一番奥の跳び箱の上とか…罠です!!って言ってるようなものだよね」
窓も全部鍵かかってる…。
当たり前、か。