小さな村の大きな話
「んっ…」
寝すぎたかも。
『〜っ!!』
『……だろ??』
樹ちゃんと佐伯先生??
扉を開けようとして立ち止まる。
「…なら、あいつが壱原の彼女か」
「みたいね」
「というか、壱原は隣に住んでいたのか」
「…そこから!?」
「興味ないからな」
「同僚なんでしょ??もう少し興味持ったほうがいいわよ。
同僚に限らず患者にも」
「お前には関係ないだろ」
「なら、落ち込むのやめてよね」
……え、あれ落ち込んでたの!?
「あれは本田も悪かっただろ」
「そうね、りんも悪かったと思う。
でも、錦も、悪い。
出会いの時点から間違ってたでしょう??
あんた怖いもん。そりゃ逃げ出したくもなるわよ」
「例えそうだとしても逃げ出すことが問題なんだ……。
視歩が見つけなかったらどうなってたか、お前ならわかるだろ??」
「そりゃ、そうだけど…」
「……患者は人形じゃない、意志のある人間だ。
医者は一方的に患者を修理するわけじゃない。治そうという意志を尊重して知識や技術を駆使して手助けをするだけだ。結局治すのは患者自身。俺はそう思ってる。
それに………自分が無力で誰かが命を落とすのは……もう、嫌なんだ……」
声が震えてる。
私、こんな優しい人に辛い思いをさせてしまったんだ…!!
バンッ!!
「あのっ!!すみませんでしたっ!!」
あ、なんの算段もなく出てきてしまった。
「えっと、私……助けてくれようとしたのに…、その、逃げちゃって…」
思いっきり頭を下げてるから顔はみえないけどおそらく驚いてるんだろう。
「……ほぉーら、錦??りんはちゃんと謝ったわよ??
お・と・な、の錦はどうかな??ちゃんと謝れるのかな〜??」
「……俺は仕事だ。患者がどうしたかなんていちいち気にしてない」
佐伯先生はそのまま部屋に帰ってしまった。
「こっちこそごめんってさ!!」
「いや、言ってないよね!?!?」
「照れてんのよ、汲んであげなさい!!
さて、食事にするから錦呼んできて。
あいつ、食事ができたからリビングまで引っ張ってきたのにまた戻りやがって」
「えと…うん、わかった…」