小さな村の大きな話
「おはよー、樹!!りん!!」
「おはよ、奈穂ちゃん!!」
「おはよ」
席につくと隣には咲座さん。
なんか…目があった気が……。
「おはようございます」
「お、おはようございます」
「良かったですわね」
「え??」
「ポーチ、見つかって」
ニッコリと咲座さんが笑う。
ゾッとした。背筋が凍るってきっとこういうことを言うんだ…。
「な、んで…。
もしかして…咲座さんが……??」
「私が指示したとでも仰りたいの??
私はたまたま見ただけですわ。無用心に倉庫に入っていくあなたを」
「…知ってたん、ですね…??」
「だから、なんですの??
私にあなたを助ける義理なんてありませんわ」
…確かに……。
「あんた、倉庫の話知ってたわけ…??」
「……樹ちゃんっ!?」
「知ってたのかって聞いてんだよ」
「たまたま居合わせただけですわ」
「なんで放っておいた??」
「助けたところで私にメリットはありませんから」
「っ!!!
黎華だってりんの事情は知ってるはずでしょうが!!
りんは、あの人と同じなんだ!!瀬野が見つけてくれなかったら」
「あの人と同じ……。
違うでしょう??本当はあな―――
ドンッ…!!!
「っつ!!」
「樹!!やり過ぎだよ!!」
樹ちゃんは咲座さんの胸ぐらを掴んで壁に押し付けていた。
その弾みで咲座さんが手首をひねったみたい。
それを必死に奈穂ちゃんが止めてる。
「ふふっ、同情??それとも傷の舐め合い??
どちらにせよあなた達二人が苦しむ姿は滑稽ですわ。
特に、本田さん。あなたが苦しむ姿は面白いわね」
「黎華…あんた……最低ね……。
いつからそんなになった訳??」
「あの5年で変わったのはあなただけじゃないって事よ。墨村さん」
「樹、離しな」
奈穂ちゃんの言葉で樹ちゃんは手を離して席に戻った。
「黎華、それ腫れるだろうから湿布貰いに行った方がいい。付いていくよ」
「……れか、…たしを…ちゃんと…て…」
「黎華??」
「……何でもない、ですわ」
奈穂ちゃんは私に、先生にはうまく言っておいて、と言うと咲座さんの手を引いて保健室へ向かっていった。
「黎華様があんなふうに思っておられたなんて……」
一気に静かになった教室。
力関係が変わる音がし