小さな村の大きな話
「聞こえてたよ、黎華」
「おじさん、遅いよ」
「ごめんね、樹ちゃん。
妻と娘が迷惑かけたみたいだ」
奥から知らないおじさんが出てきた。
「えっと…??」
「黎華の父親だ」
チラッと錦さんを見ると答えが帰ってきた。
「お父さん…なんでっ!?」
「樹ちゃんとメル友なんだよね。
メール貰ったから飛んできんだよ」
「孝黎さんっ!!」
咲座さんのお母さんがお父さんにすがりつく。
するとすぐさま手を振りほどかれた。
ぱぁぁん!!
「離せ」
「孝、黎…さん??」
「たくさんのお稽古事や異常に厳しい門限。
携帯のチェックにあの担任。おかしいとは思った。
君が言う黎華のためは本当に黎華にとっていい事なのか…わからなくて…」
「当たり前です、私は黎華さんのためを思って!!」
「嘘だっ!!」
「黎華さんっ!!」
ビクッ
咲座さんの態度ですぐわかる。
怯えてるんだよね…。怖がってる、でも必死に戦ってる。
「お母様は私と一度もちゃんと目を合わせてくださった事ありませんわ。
私の話を聞いてくださったこともありません。
お母様が気にするのは私の話や主張、意見ではなく周りからの評価……」
「黎華さんはまだ子供でしょう??私達大人が管理しなければ…!!」
ぱぁぁん!!
樹ちゃんが咲座さんのお母さんを平手打ちした。
「管理、ね。
私の嫌いな言葉!!私たちはモノじゃない!!」
「別れよう。
もとより君はあんまり好きじゃない。君が黎華の母親になれると言うから付き合う事にしたんだ。うちの娘を手酷く扱うなら君は必要ない」
…それはそれでひどい気が……。
「黎華、帰ろう」
「待って!!孝黎さんっ!!」
「君も、今晩はうちに泊まるといい。
でも、今晩中にすべての荷物をまとめて明日朝には出ていってくれ。
君が新しい家を見つけるまでは村の空き家を紹介しよう」
咲座さんのお母さんはショックが大きいみたいでほぼ放心。
「3人とも、迷惑かけてごめんね。
樹ちゃん、またメールするよ。今日はありがとう」
「別に。頑張ってね」
「あぁ」