小さな村の大きな話
ピーンポーン。
『壱原です』
「鍵空いてるから入ってきて」
『はい』
……大和くん!?!?
「お邪魔します。なんか、すごく修羅場感出てる家族とすれ違ったけど…なんかあった??
って、佐伯!?!?」
「あ、そっか…言ってなかったっけ。
私の兄の、佐伯錦」
「よろしく」
「あ、うん。よろしく」
大和くん、すごいびっくりしてる…。
なんか、可愛い。
「これ、お前がいない間のりんのカルテ」
「え、あ、うん、ありがとう。
って!!りん!?なんで呼び捨て!?」
「本人がりんでいいというから」
「だって、私だけ錦さんの事名前で呼ぶのもなんか…ねぇ??」
「!?!?」
「俺、佐伯姓嫌いだし」
「え、なんか二人ともずるい!!」
「呼びたきゃ勝手に呼べばいいだろ」
「に、にし、き……錦!!」
目を逸らして照れてる。
「気持ち悪いわ!!」
パコーンと丸めた新聞紙で樹ちゃんがツッコミを入れている。
「普通そこは俺じゃなくてりんを呼び捨てだろ??」
「だって、は、恥ずかし……」
「乙女かっ!!!」
すかさず樹ちゃんが突っ込む。
「じゃ、俺も壱って呼ぶから」
「壱??」
樹ちゃんが首を傾げている。
「学生時代、みんな呼んでただろ??」
「……驚いた、錦が同級生の名前ちゃんと覚えてるなんて」
「僕のこと、認識してくれてたんだ…!!」
錦さんってよっぽど無関心だったんだろうなー…。
まぁ、今も割りとそうだけど。
「じゃぁ、私も。
色々あったけど、嫌いじゃないから。
あだ名で呼んだほうが親しみ湧きそうだしね」
「檜山さん…」
「樹でいいよ」
「じゃ、改めてよろしく!!」