小さな村の大きな話
【樹side】
……そう、私が一番よくわかってる。
人の心配してる場合じゃ、ないんだ。
コンコン
「はーい」
でもここからは、一度全部忘れて…。
いつもの樹に戻るんだ。
「入るよ、りん」
「どぞどぞー」
「よかった、顔色良さそうじゃん」
「うん、一度眠ったらだいぶ落ち着いた!!」
「そう、無理しないでね」
……こうやって何も知らないりんと話すのは私にとってかけがえのない時間。
「それでね、大和くんが――」
失っちゃいけない。
私が私であるための大切な時間。
「ふふっ、本当に壱と仲良しなんだね」
「ふ、普通だよ!!」
「喧嘩したりしないの??」
「うーん、あんまりしないかなー。
今までで喧嘩は1回しかないかも」
「1回??」
「そう、この村に来てから1度だけ」
あぁ、あの時か……。
私が壱を苦手になった原因になった事件だ。
「……あ、ごめん」
「いやいや、私の方こそ暗い顔してごめん」
「まだ、大和くんのこと苦手??」
「ほんの少しだけ、ね」
「ありがとう」
「なんで??」
「苦手なのに、歩み寄ろうとしてくれて」
「私がそうしたかったから、してるだけだよ」
「そ、っか……」
なんか、突然りんの呼吸が早くなる。
「りん??」
「はぁっ、はぁっ……っく……」
発作か……。
ナースコールを押して背中を擦る。
「大丈夫、すぐに壱が来るよ」
「んっ……。
はぁっ、あり、が……」
「無理に話さなくていいから」
「はぁっ、はぁっ……」