小さな村の大きな話
【大和side】
大丈夫かな……。
りんちゃん説得するの、難しそうだし…。
「はぁー…」
「どうしました??」
近くにいた長谷さんが首を傾げている。
「いや、なんでもないです」
「先生、結構わかりやすいですよね。りんちゃんですか??」
樹ちゃんといい長谷さんといい……。
「僕、そんなにわかりやすいかな…」
「驚くほどな」
「いたっ…」
パコッと丸めた書類で錦に叩かれた。
「錦!?いつからそこに!?」
「さっき。気になるなら少し様子を見てくればいいだろ??」
「……でも」
「今のままで仕事に集中できるのか??」
「ごめん、すぐ戻る……」
少し小走りでりんちゃんの病室に向かう。
………気になる!!
『〜〜っ!!!』
『………〜〜!?!?』
……言い合い??
まさかと思うけど…喧嘩になってる……??
いや、りんちゃんだしありえないか。
『樹ちゃんに何がわかるの!!何も知らないくせに偉そうなこと言わないでよ!!
ずっと元気で、明るい友達もいて、優しい家族に恵まれて!!
……樹ちゃんにはわからないでしょ!!
みんな出来るのに自分にだけ出来ない辛さも!!1人ベットの上で過ごす寂しさも!!死に怯える発作の苦しさも!!』
扉の前に来ると、はっきり聞き取れた。
………りんちゃんだったかー!!!
っていうか……そんな風に、思ってたんだ…。
僕、ずっとそばにいたつもりだったのに……
なにも、わかってなかったんだ…。
『何も知らない??それはりんでしょ??
私の何を知ってるの!?言ってみなさいよ!!
ずっと元気??明るい友達??優しい家族??
馬鹿じゃないの!?!?』
なかなか、激しい言い争いになってる……。
お、女の子怖えぇぇ……。
『……樹ちゃんひどいよね。
私、知ろうとしたし、わかろうとしたよ!!
でも、触れようとすると拒絶したじゃん!!
樹ちゃんこそ、伝えられないくせに察してほしいとか思ってるんじゃないの??
……ほんと、最低。
出てって……ここから出て行って!!!』
出て行ってって……。
出てくる!?まずい、流石にまずい!!
この会話聞いてたってヤバすぎる!!
バンッ
「あ、樹ちゃ――
ドンッ
走って行ってしまった。
「大和くんも!!出て行って!!一人にして!!」
とりあえず事情を聞かなきゃ…。
そう思って樹ちゃんを追いかける。
俺、追いつけるかな…??
そんな心配をよそに樹ちゃんは階段の踊り場で1人立ちつくしていた
「……樹ちゃん」
「………」
「樹ちゃ―――
返事の代わりに妙に身体が傾いた。
慌てて掴んだ腕は折れそうに細くて僕はただ、動揺した。