あの日の記憶
おとうさん
「やっと着いた…」


私はそう思った。


だっていつもは短く感じる道も、とても遠い感覚だったから


タクシーの扉が開き病院の中に入る。


ばぁばは
「お父さんとお母さんが居るのは6階やねん」


と言いながらエレベーターに乗った。


エレベーターの中は、車椅子の人が乗っていて


「あぁ、やっぱりここは病院なんだ…」


と実感出来た。


6階に着くと目の前の待合場所の椅子にお父さんの妹さんとお兄さん。


そして、お父さんのお母さんとお父さんが深刻そうな顔で座っていた。


私は無言で椅子に座る。


いつも皆笑顔なのにな…


私達が着てすぐに、看護師の人が


「山中さんのお子さんはいらっしゃいますか?」



と、待っていたかのように言った。


「はい。います。」


と言って、看護師について行く。


私の胸は張り裂けうなくらい鳴っていた。


看護師に案内されたのは集中治療室の前の待合室だ。


中に入ると泣いているお母さんと、男性の医者がいた。


医者は私と弟に座るように言った。


私と弟が座ると、落ち着いた表情で話し始めた


「初めまして。私は山中勝三さんの担当医をさせて頂きます。佐藤です。


今、あなた達のお父さんは意識不明の状態です。でも、生きています。


あなた達のお父さんは、肺結核と言う、急病で倒れました。


私達も出来る限りの力を尽くそうと思いますのでお父さんを応援してあげてください。」


とだけ告げると、待合室から出て行ってしまった。
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