癒し恋~優しく包まれて~
入江さんは軽く私の肩に手を置いてから、トイレへと席を立った。


「今までいろんなアイツを見てきたけど、手を繋いでるのは初めて見たよ」

「それは私が子供っぽいとか?」

「いや、そんなことないでしょ? 三上ちゃんは落ち着いて見られるタイプでしょ? あー、もしかして進士しか見せないめっちゃかわいい顔があるとか?」

「えっ?……」


進士さんの言うとおりに私は落ち着いている、大人っぽいと言われることが多かった。

でも、入江さんは私をかわいいと言う。

彼にしか見せない顔?

醜態ばかり見せている気がする……だけど、それをかわいいと……


「柊花、何を悩んでる?」

「あ、いえ! なにもないです。うわっ!」

「おっと」


こめかみ辺りに手を当てて俯いているところに、入江さんの顔が突然近付いてきたから、驚いて思わず体を後ろに反らした。

しかし、背もたれの小さい椅子でその動きをしてしまうと、バランスが崩れ落ちてしまいかねない。

入江さんが咄嗟に背中を支えてくれたから落ちずに済んで、ホッと胸を撫で下ろす。
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