癒し恋~優しく包まれて~
義母が渡してきた袋の中には、今日食べたケーキと同じ洋菓子店の箱が入っていた。

ここのお店のフルーツケーキは私が好きなものだ。


「ありがとう。ねえ、お母さん」

「えっ? 柊花ちゃん……」


初めて『お母さん』と呼んだ。母だけでなく、父も弟も驚いた顔をしている。

私はそんなに今までひどい態度を取っていたかなと心の中で苦笑した。


「あの、今度帰ってきたら、ビーフシチューの作り方を教えてくれる? お母さんのビーフシチューの味、好きだから」

「うん、いつでも教えるからね。また帰ってきてね」


母は涙ぐみながら、何度も頷いた。


「入江さん、ぜひまた娘を連れてきてください」

「分かりました。約束します」


俊也さんと父は約束を取り交わした。

私たちは見送りしてくれた家族に手を振って、来たときよりも晴れ晴れした顔で帰り道を歩いた。


「俊也さん、今日は本当にありがとう」

「ううん。柊花の家族に会えて嬉しかったよ。そのフルーツケーキ、俺にもちょうだいね」

「うん!」
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