癒し恋~優しく包まれて~
「岩田。プロジェクター使うかもしれないから用意しておいてくれる?」

「分かりました。取りに行ってきます!」


岩田くんが元気よく返事をして出ていって……しーんと静かになる。

えっと、なんで今、二人きりに?

唖然とした私の手の力が緩み、レイアウト図が手から離れてヒラヒラと床に落ちた。


「あっ……」


落ちた紙を掴んだその先に黒い革靴が視界に入る。私の前まで来て止まる爪先を確認して、顔を上げる。

そこにいるのはもちろん入江さんだ。視線がぶつかり、身動き出来なくなる。

そんな私を微かに笑う。


「岩田が戻ってくるまで二人だけだね」

「でも、すぐに戻ってくるかと……」


思いますと続けるつもりだったけど、腕を掴まれ引き寄せられてた。

だ、抱き締められている?

突然のことに驚いて息が止まった。思考も止まった。


「岩田さ、うちの部に取りに行ったと思うんだけど、今うちのは貸出ししていてないんだよね。だから、多分営業部に借りに行くと思う」


営業部は1つ上の階だから、うちの部に行くよりは時間がかかる。だけど、それほど長時間になるとは思えない。
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