癒し恋~優しく包まれて~
5分で戻ってこれるところが15分になったといったところだ。

だから、こんなふうに抱き締められている場合ではない。こんなところを岩田くんに見られて変な誤解をされたら入江さんも困るはず。

いろいろと心配しているというのに、抱き締める力は弱まらない。

心配にならないのかな。


「んー、柊花の匂い嗅ぐと落ち着くね」

「えっ? におい?」


香水は休みの日の出掛けるときくらいしか付けない。どんな匂いがするというのだろう。

シャンプー? 柔軟剤? それとも汗?

汗をかく季節ではない。だけど、テーブルを動かしたりしていて、少し体が熱くはなった。まさか本当に汗の匂い?

それはいくらなんでも嫌だ。そんな匂いを嗅がれたくはないから離れたい。

離れようと胸を軽く押したとき、ガチャとドアが開いた。私が押すよりも素早く入江さんが反応して、腕の中から解放された。

岩田くん、早い! まだ10分も経っていないよ。


「あ、ここにいた!」


えっ? 誰?

ところが入ってきたのは岩田くんではなく、見たことのない女性。
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