癒し恋~優しく包まれて~
神原さんは頭を下げてから、入江さんを見た。入江さんはそんな神原さんに軽く頷く。そんな何気ない動きの中でも二人は信頼しあっている関係だと感じさせられる。

友だちだという二人の関係は10年くらい続いている。自分の知らない二人の過去を探っても仕方がないと思うけど、気になり出すと止まらない。

過去より大事なのは今だ。二人は復活するのかな。

入江さんが受け入れれば復活するのだろうけど、断られていると神原さんは言っていた。

打ち合わせが終わり、会議室を出ていく人の流れを私は座ったままでぼんやりと眺めていた。


「岩田と三上さん。悪いけど、片付けも頼んでいいかな?」

「はい、分かりました! じゃ、三上さん……あれ、三上さん? おーい」

「えっ? あー、はい!」


顔の前に岩田くんの手が来て、上下に振られたことで止まっていた思考を動かした。


「三上さん、大丈夫? もしかして寝てた?」


入江さんに顔を覗き込むように見られ、思わず体を後ろに引く。


「いえ、ちゃんと起きてました」

「なら、いいけど。じゃあ、よろしくね」


私の肩を軽く叩いて、入江さんは出ていった。
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