【完】もっとちょうだい。

震えたスマホは、あたしのじゃない。


麻里奈ちゃんは、震える自分のスマホを見て、首を傾げている。


「んー、知らない番号だ……。はい、もしもし」



「あ、なんだぁ。今ね、芙祐ちゃんと迷子。迎えに来てもらえる?」



少し話してから簡単に電話を切った麻里奈ちゃんを
伺うように見つめた。



今の電話の相手って、
もしかして。




「やっちゃんからだった。友達にスマホ借りて電話くれたみたい。今から来てくれるって」




「……あ、そう」



もう作り笑顔なんか作れなかった。


ヤヨはこんなとき、
麻里奈ちゃんに電話するんだ。


……あたしにじゃ、ないんだ。



徐々に瞼が熱くなる。



唇をぎゅっと結んで
少し離れた地面をにらむ。



ぷくっと涙が浮かぶのがわかって、
あたしの意に反して、
視界はゆっくりゆがんでいく。



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