【完】もっとちょうだい。
「なに」


『はは、不機嫌そうだね。芙祐ちゃんと喧嘩したんでしょ』


訳知り顔でわらってんだろ。
桜木慶太。



「なんでソレ知ってんの」

『駅で会ってね。缶ジュース一本飲み干すくらいの時間、話聞いてたから』


「はぁ?」

『泣いてたし、心配だし、芙祐ちゃんにだって元カレと過ごす権利はありそうだったし』


「……」


……なんも言えない。



『よくここまで、大事にしないことできるね。弥生くんってそういう才能があるの?』


「うざ……。つかもう切っていい?」


よく考えたらなんで俺の番号知ってんだ、こいつ。


『芙祐ちゃん、俺と付き合ってたときはこんな喧嘩したことなかったよ』


「……。切るよ」


『ちょっと待って。なんのために友達に番号聞いてまで電話してると思ってんの。言いたいことがあるんだよね。前々から』


「なんだよ」


今、全然それどころじゃないんだけど。


『弥生くんは、俺が芙祐ちゃんと付き合ってた時、何回も奪いにきたよね』


「それがなに」



だから大事にしろってか?


そう、思ったのは、
俺の考えがかなり甘かったからだと思う。



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