【完】もっとちょうだい。
「え」


言葉に詰まるあたしの方を慶太くんはちらっと見て。

「涙とまった」


って、優しく目を細める。


「頭の中から、ヤヨのこと放り出してるとラクかも……。そっか、考えなきゃいいのか」

「今更……、ほんと芙祐ちゃんらしいね」


慶太くんの呆れ笑いに集中。


「芙祐ちゃんと藍ちゃんがよければだけど、今から匠呼んで四人で勉強しない?」


「藍ちゃんに聞いてみる。そういえばさっきまで英語してて、わかんなかったところあったから教えてほしい」


「いいよ。とにかく受験近いから勉強しよっか」


「うん……」

「勉強一旦終わったらまた話聞くから。その時まで頭の中忙しくしてがんばろ」


慶太くんは、空になった缶をあたしの手から抜き取って、ゴミ箱にナイスシュート。


教室で四人で勉強始めてから、慶太くんはただのスパルタだったけど、


それって結局、あたしの頭の中に次から次へと問題投げ込んで、
考えさせないようにしてくれたのかな。なんて。


でも多分、きっと、本当にそうだよね。


慶太くんみたいに優しい人って、あんまりいない。



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