【完】もっとちょうだい。
振り返ると、慶太くんが自分の唇に一本指を立てて「しー」って……。


「言いすぎると後悔するよ」


そう、小さな声で言った。


涙でぐちゃぐちゃな顔を背けて、慶太くんにスマホを差し出した。

「え?俺で大丈夫?」

迷わず頷く。

「もしもし、弥生くん。慶太だけど」


「あー、誤解しないで。学校で勉強してて、たまたま会って、たまたま藍ちゃんカップルと一緒に勉強してただけだから。別にいいよね?」


ヤヨの声が全く聞こえない。


そう思ってたら、慶太くんがかがんで、あたしの耳元にスマホを近づけてくれた。


「弥生くんは、芙祐ちゃんのことが好きなんだよね?」

『当たり前だろ』

……あ、ヤヨの声聞こえる。

「ソレ……たとえばね。芙祐ちゃんが一番だとして、二番目は絶対にいない?」

『二番て……なに?』

「二番は二番でしょ。いや、俺わかんないんだよね。なんで彼女を大事にできないのか。付き合ってるのは芙祐ちゃんで一番好き。でも心のどこかで二番目に大事な人がいて、だからこうなるのかなって」



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