【完】もっとちょうだい。
恐る恐る目をあけると、大きな手がナナちゃんの小さな手を掴んでた。


「お互い落ち着け」


そう、後ろから低い声。

振り返らなくても、たぶん、ヤヨの声。


ナナちゃんはばつが悪そうに掌をひっこめた。


……ヤヨ、だと思う。


だから、慶太くんがやばーって顔してるんだと思うし。


いつからいたの?
さーっと血の気が引く。



さっきなんて言った?あたし。


……“慶太くんほど優しい人なんて、あたしは知らない”。


……後ろをゆっくり振り返ると、ヤヨはもう教室の方に歩き始めていた。



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