【完】もっとちょうだい。
「やっぱり芙祐ちゃん、彼氏と別れたんだ。三日くらい前、慶太と抱き合ってたもんね!」

ナナちゃんが嫌味ったらしい声でそう言った。


ギャラリーはざわっとして。
でも、そのあと、しんとした。


「……」

あたしも、慶太くんも、言葉がでなくて。


歩いて教室の方へ向かってたヤヨが、あたしの方を振り向いて、
数秒、目が合った。



ヤヨの目が、すごく悲しそうに「本当なのか」聞いてた。


思わずそらした。


それって、結局“本当だよ”って言ったようなもの。



ヤヨはそんなあたしに何も言わず、教室にはいっていった。


ヤヨとこれ以上こじれたくないなら、
今、追いかけなきゃいけなかった。


「抱きしめられたのは事実でも誤解だ」って。


慶太くんに対して浮気心なんかないから、なんとでも弁解できる。


でも、あたし
追いかけられなかった。


もう今、ヤヨから
愛されてる自信は全然ない。


誤解を解こうとして、ヤヨから何を言われても
あたし、きっと頑張れない。


それに頑張って
誤解をといたところで、


ヤヨの心には、どうせ麻里奈ちゃんがいるんだから。



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