【完】もっとちょうだい。
登校日の朝。


廊下を通っていたら、行く先にひとだかりを見つけた。

しかも、その真ん中にいるのが、
芙祐。
それと桜木慶太。



芙祐が1対4で、女子たちと言い争ってる。


……あいつをかばってんの?

悔しくてため息が出る。


言い争いはヒートアップしていく。


急いで人だかりに混ざって、
芙祐のすぐ後ろにたどり着いたとき、

「慶太くんみたいに優しい人、あたしは知らない!」

芙祐はそう言い切った。


下唇を噛んで、何か言ってしまいそうになるのをこらえた。

だって。
それって、きっと。
……まぎれもなく本心なんだろう。


芙祐の方へ振りかざされた女子の手を押さえて、


「お互い落ち着け」

なんて、適当なことだけ言って、

芙祐の方はなるべく見ないように立ち去った。



教室に入る前。
廊下から聞こえる声がやけに鋭く響いた。


「やっぱり芙祐ちゃん、彼氏と別れたんだ。三日くらい前、慶太と抱き合ってたもんね!」


< 141 / 268 >

この作品をシェア

pagetop