【完】もっとちょうだい。
「お前と別れて、なんでそのあと俺と付き合ってくれたのかわかんね」

「それは弥生くんが奪ったからでしょ。喧嘩うってる?」

「いや、売ってない」

売る元気ない。


「芙祐……俺のことたいして好きじゃなかった」

「んなわけないじゃん」

「お前は何も知らないからな。そう思うかもしれないけど」

「結構知ってるとおもうんだけど」

「……。それもどうなんだよ」


芙祐との距離近すぎだろ。今更、もういいけど……。


すっかり心が折れてるからかな、こんな相手でさえ、ぼろぼろと話してしまう。


とくに芙祐と価値観の似てる、あいつだから訊きたい。


「好きな人と別れ話して、笑ってサヨナラできるもんなん?」


「……えー、好きならきつくない?そうでもなかったら余裕だけど」

「だろ?」

もう確定じゃん。


「芙祐ってお前と付き合う前はかなり軽くて適当だったじゃん。別れてもけろっとしてて」


「あー、そうらしいね」


「お前の時は違った?」


「またその質問……なにを聞きたがってんの?」


ずっと窓の外を見ていた桜木慶太は、ちらっとこっちを見て「あ、泣いてない」って。だれが泣くかよお前の前で。


「まさか芙祐ちゃん、笑ってバイバイしたとか?」


そんなまさかだよねって、冗談めかして笑ってるところ悪いけど。


「……そのまさかだよ」


俺が頷くと、桜木慶太は目を丸くして「え」とだけ言った。


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