【完】もっとちょうだい。
「だから俺は。お前とは違うの。その他大勢の元カレたちと同じ。遊びとか、気分とか。芙祐はそういうので付き合ってたんだと思う」

「……」


桜木慶太は黙って、どこかをみながら、何か考えてる。


「可哀想……」


散々考えて出た言葉がそれかよ。

「うざ」

「もし本当ならね。それ芙祐ちゃんに聞いたの?」

「聞いたところであいつにとっては、“今までの元カレのこともちゃんと好きだったもん”とか言いそうじゃん」


何回も聞いた、そのワード。

桜木慶太はこっちを向いて、わざとらしいほど大きくて長いため息をついた。


「そもそも芙祐ちゃんと弥生くんって、お互いのこと信用しな過ぎじゃないの?」


「……信……。いや、基本的に信じてる」


「うそでしょ。信じてたらいちいち俺なんかに妬かない」


嘲笑う桜木慶太。どの口が言うんだよ。


「この前宣戦布告したようなやつに焦らないならそっちが呑気すぎるだろ」


「宣戦布告する前からいちいち気にしてたじゃん。たまたま志望大学がかぶったことも、内心気が気ではなかった」


「言い当てんな」


桜木慶太がくすくすと笑っている。


まじでむかつく。こいつの訳知り顔。



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