【完】もっとちょうだい。
「弥生くんのこと嫌になったんだ?」

んなわけないのに、聞いてみた。

「……。見透かしてます、みたいな顔しないで」

「別に見透かしてないよ」

くすっと笑うと、芙祐ちゃんはハンカチで涙を拭いて、静かに言った。


「別れたほうがいいってヤヨが言ったんだよ。大学にいけば麻里奈ちゃんがヤヨもすぐ近くにいるんだもん。あたし、別に要らなくなったってことでしょ……?」


……どんだけすれ違ってんだか。


「……それは、弥生くんに聞いたの?」


ふたりに同じ質問してるからね、俺。


「慶太くんも電話で聞いてたじゃん。二番目に大事な人はいない“と思う”だよ。それも、言葉に詰まってからね。麻里奈ちゃんのこと大事だって、あの時ヤヨ自身も気づいちゃったんじゃないかな……」


あぁ、また泣いちゃった。
麻里奈ちゃんへの気持ちばっかりは、
弥生くんに聞かないとわからないことだし、
本人から聞くべきだと思うよ。


「今からそれ、弥生くんに聞きなよ。別れるにしても、二人とももう少ししっかり話さないと」


「本人からはっきり言われたくないよ……。今の方がダメージ少ないもん。ずっと、付き合ってた間じゅう……あたし以外のひとがヤヨの心のどこかにいたのかなって……おもうと。きつい……」

「すごいわかる、それ」

「ご・ごめ……」

芙祐ちゃんが青ざめた。
思い当たる過去、思い出したね。

「ははっ冗談だって」


芙祐ちゃんは、ずっと大好きだもんね。弥生くんのこと。
直視するのがつらくなるくらい。



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