【完】もっとちょうだい。
「弥生くんのことが好きなのに、別れたくないってなんで言わなかったの?」

別れたかったようには見えないんだけど。全然。

「それは……慶太くんのせい」

「え?俺?」

とんだ火の粉。

「慶太くんと別れ話になった時、あたし別れたくなくて……何回も別れたくないって言ったけど。駄目だったもん。結構トラウマだよ。何回も振られた言葉、一言一句覚えてるもん……」


自虐的にいう芙祐ちゃんに、俺は思わず笑ってしまった。

「なんで笑うの」

「いや……。ははっ」


嬉しいからに決まってるじゃん。
たとえ、トラウマでも、嫌な思い出でも
芙祐ちゃんに残ってくれてることが。


「別れ話にすがりつくのはやめようって、慶太くんと別れたあと決めたからね、あたし」

「学んだってこと……」

臨機応変にいけばよかったのに……。


でもそういうところが
芙祐ちゃんらしいよね。


……ばかだなぁ。
芙祐ちゃんも、弥生くんも。


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