【完】もっとちょうだい。
屋上の扉を開けると、
冷たい風が流れてきて
ぶるっと身を縮めたら。

ヤヨ、鞄の中から何か出して、
あたしの首に巻き付けた。


そのまま、そっぽ向く。

……すこししかみえないし
寒いからかもしれないけど
ヤヨのほっぺ、赤い。かも。


首元あったかい。
……緑のマフラーだ。
クリスマスに、あたしがあげたもの。


「……使ってくれてるの?」

こくっと小さく頷いて、柵に手をかけて、遠くなんかみたり、溜息をついたりななんかして。

ヤヨの落ち着きのなさ、どうなの?
でも多分あたしも同じくらい。


……どきどきする。
隣にいるだけで、
心臓、しんどいくらい。


やっぱり、大好きなんだよ。
ヤヨのこと。


……キーンコーンカーンコーン。

あ、チャイム。

さっき予鈴が鳴ってたから、多分これ、
卒業式はじまるやつ。


「ヤヨ……卒業式さぼっていいの?」

「俺的には、絶対駄目」

「……いく?」

「……行くわけない」


絶対、だめなのに?

あたし、笑っちゃった。
……嬉しいんだもん。


「芙祐は?最後くらい行かなくていいの?せっかく、珍しくマトモな格好してんのに」

「……行くわけない」

同じように言ったら、ヤヨ、
「あっそ」だって。


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