【完】もっとちょうだい。
ココアを一口のんで、
俺が平然を装っていたら



「あーあ……」



って明らかにがっかりした声が聞こえたんだけど。



「何?」


「ヤヨって……奥手?」



奥手?


俺奥手?



「……いや、知らないけど」




「めちゃくちゃに押し倒されそうなくらいのキスしてほしい」




……ハードル高。



「そもそもそれ外じゃできないだろ」


「ふぅん……」


芙祐は不服そうに、ココアを飲んでいる。



めちゃくちゃに、って。
押し倒されそうって。



何言ってんのかわかってんの?この悪魔。



芙祐は、そうだった。

こうやって人を翻弄するのが趣味だった。



小悪魔=土屋芙祐
これは、高校内でも周知の事実。




でも。
たくさんの男と付き合ってきて、経験豊富かと思えば体の関係まではなかったらしいし。


本気で好きになった……桜木慶太とも「未遂だった」って芙祐の親友の藍が言ってた。


要するに、


奥手はお前だろ。



「めちゃくちゃにしてくれていいのに」


芙祐は、ぷぅと頬を膨らませる。



まだ言う?それ。



「本気?」



俺がにじり寄ると、

ほら、一歩二歩と下がるくせに。



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