【完】もっとちょうだい。
ヤヨ、嫌そうだけどね。
ついていくよ。
彼女の特権つかってみるね。今。


「駅から結構歩くよ?」

「平気だよ」

「そのヒールでいけんの」

「いけるね。ぺったんこの方が歩きづらい」

「なにそれ」


ヤヨ、ふふって笑う。

駅からヤヨの大学までの間。
登校する学生いっぱい。

桜並木ずらーって。超きれい。

でもさ、さっきから
すっごく気になる。

「ヤヨ、注目浴び過ぎじゃないの」

さっきからおぼこい女の子が
すれ違いざまに
「今の人イケメン!」とか言ってるの
聞こえてるからね。


多分あの子たち、
ヤヨの大学のぴかぴかの一年生。


「別に誰も俺のことなんか見ねぇよ」

すかしてる、ヤヨめ。

ちらっと見上げる。


ヤヨ、こんなに見慣れた存在なのに
今でもあたし
会うたびにドキドキする。
超かっこいい。


髪、いまだ一回も
染めたことないっていう
貴重な人種だけど。


服も高校生のときと
大して系統も変えず
ゆるーい感じ。
超かっこいい。


今のヤヨ、多分、
出会ってから一番
かっこいいと思う。


普通彼氏のこと
アイドルみたいに
「かっこいー……」って
倒れちゃいそうになるものなのかな。


あたし、最近それ
よくある。
ヤヨ病。


今も、たまらなくなって
ヤヨの腕をぎゅっと抱きしめてみたら


「暑い」

って暑くもないのに
そういうこという。


……ヤヨっぽいでしょ。




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