【完】もっとちょうだい。
芙祐は、意外と純粋だから。


言う割に、度胸なし。


「じゃあ普通のキスならしていいの?」



俺がそう聞くと、コクリと頷いた。



「なんだよそれ」



根性なし。
可愛すぎだろ。



芙祐の髪を撫でて、触れる程度のキスをしたら



「だいすき。ヤヨ」



と言って、芙祐は下唇を軽く噛んで笑……



「やっぱ足りねぇわ」



不意打ちで、距離を詰める。


何度も何度もキスをしたら



「んっ……や、」


って、なにその声。あり?なしだろ。理性とばす気か?



一度唇を離し、至近距離で芙祐を見つめる。


赤い顔、潤んだ瞳ーーー。



「はぁ……っ、やよ、」


甘い、声。



「……喋べんないで」



可愛すぎるから。


もう一度唇を重ねたら、



「ん……っ」



頭の中、しばらく俺だけにしとけよ。
悪魔さん。



唇を離して、ソッコー後ろを向く。
ココアを飲んで一息ついた。



芙祐はまだ、放心したように、真っ赤な顔をしたまま俺の方に目線をあげた。




「ヤヨ……やばかったぁ」



って、両手で頬を抑える芙祐は、
多分こっちの赤面になんか気づいてない。


そうしていたら、自転車が一台、駅の駐輪場からこっちに向かって出てきた。




乱れたグロス、赤い顔。
うるうるの目も、
恋する乙女って感じな雰囲気すべて。



「誰にも見せたくねぇわ」




芙祐を抱きしめると、芙祐はわけわからなそうに、俺の制服の背中をキュッと握った。


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