【完】もっとちょうだい。
ランチセット届いて、どれもおいしいけど

「あの。芙祐?」

「なに」

「いや……」

ヤヨ、言葉と一緒にハンバーグ飲み込むやつ。

この気まずさ、わかってもらえる?

でもあたし、
確かに口数少ないけど
こんなことで喧嘩はしないよ。

平和主義だからね。

食べ終わった頃、麻里奈ちゃんがまたやってきた。

アイス二つ持って。

「やっちゃん、さっきはありがとう」

なんて、にっこにこして言うんだよ。
もうやだ。この子。


「さ……さっきって、なんだっけ……」

ヤヨ、わかりやすくあたしの顔色うかがいすぎ。

「これサービス」

差し出されたアイスに
あたし、「ありがとう、嬉しい」って
にっこり言ったから。ちゃんと。


「どういたしまして。いいなぁ、芙祐ちゃん。前よりももっと可愛くなったね」

「可愛すぎる麻里奈ちゃんに言われたくないなぁ」

笑ってそう言ったらね。

「んーでも、芙祐ちゃんのそのお化粧も服装も、やっちゃんの好みって感じじゃないけどね」

だって!

聞いた?

あたし、「そうなんだぁ」って、
とりあえず口角だけ
超意識的にあげといた。


ヤヨ、あたしと麻里奈ちゃんの
ばっちばちの火花出てる様子に
焦ってはいるけど……
多分、焦りすぎて動けなくなってる。

「やっちゃんこれ見てー?」

って、制服のスカートの端を
ぴっと持ち上げて、ポーズ。
はい可愛い。

「結構似合うでしょ?」

まだ言うか。

「え、いや……わかんない」


うん、そんな風に言葉濁すことくらい
あたしには想定内だよ。
ノーダメだからね。


でもヤヨは、
もう麻里奈ちゃんのほうも
あたしのほうも見ず。


「ヤヨのこといじめないであげてよ」

あたし、言い返してみたら

「いじめ?なんで?」

って、首傾げて、目ぱちぱちするの
その顔面偏差値でやったら、あざとすぎ。

あ……アイス溶けてきた。

唇とがらせたまま、アイス食べようとしたとき。



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