【完】もっとちょうだい。
「あれ?芙祐じゃん!!」

って、ヤヨの、
スーパーテンション高い声。
こんなに元気だせるんだね、ヤヨって。

「おいで」って手招きしてる。

ヤヨ、笑ってる。
そんなにうれしい?
こっちが恥ずかしいよ、なんか。


あたし、こんなに赤面して
ヤヨのところは向かうのは
初めてだよ、たぶんね。


「ヤヨちゃん、酔いすぎ」

あたしの注意なんか、
聞いてないね、ヤヨ。


「これどうしたん?」
ってあたしのパーカーを指差した。


「ハルキくんに借りたの」


「は?俺の着ろよ」


ってあたしの首元まで上げたファスナーを
下に下げていく。


「あ、待っ……」



あたしの胸元みて、
「え」って声を漏らしたヤヨ、
そのままあたしを
ぎゅーって抱きしめた。


「ちょっと、苦しいよ……!」


隠してくれてるんだろうけどね?


でも、もう外野、悲鳴あがってるから。


もう恥ずかしい!酔っ払いめ。
自分でチャックあげて、ヤヨから離れる。


「なにこれ?どうした?」

「ハルキくんの持ってた水がかかったっていうか」


「ハルキ!!」

ヤヨが柄にもなく声をあらげた。

「あー、だからさ、ごめんって!」

ハルキくんはヘラっと笑う。


「ハルキお前……見た?」

「えぇっとー」

「……正直に言えば許す」


「見た。黒レース」


「……殺す」


ヤヨちゃん、目、すわってるすわってる。


「ひっど!許すっていったじゃん!」


そう言いながら紙コップを差し出すハルキくん。
ヤヨ、それを一気に飲み干した。
あれ、水だよね?お酒だったら怒るよ?


「寒くない?芙祐」

「うん大丈夫」

ニッと笑ってピースしてみたら


「……なんでそんな可愛いん?」


って、そんなのここで言わないで。


まわりのひとたち、冷やかしてるよ。あたしたちのこと。



もう結構、消えたいよ、あたし。


「弥生さん、彼女さんのこと好きすぎ!」

「見てらんない!」


そんな声、あがってるのにね、
この酔っ払い、全然わかってないよ。



「かわいいっしょ」


あたしを後ろからぎゅっと
抱きしめたまま

にこーっと笑ってみんなに言うんだよ?



「もうヤヨ、酔いすぎ。お水買ってくるから待ってて」


「俺もいく」


肩抱くの?
そうなの?

みんなの前だよ?

ま、もういっか。なんでも。


今ならヤヨが
パンケーキ食べたくて飛び跳ねてても
あたし受け流せそうだよ。


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