【完】もっとちょうだい。
翌日の学校。


なぜか、英文科所属の芙祐の元カレ、桜木慶太が普通科の棟にいて、

理数科の俺も普通科の棟にいる。



俺は暇だから、芙祐や芙祐のクラスのやつらに会いに来たんだけど。

俺も理数科に移るまでは芙祐たちと同じクラスだったから。



あ、やばい、桜木慶太と目があった。


「弥生くんだ。久しぶりー」



笑顔で手を振る桜木慶太。
目はあんまり笑ってない。いや、全然。



当たり前だけど。



芙祐がこいつと付き合ってるのに、
強引に奪いにいったのが俺だから。




「なんで普通科にいんの?」


「心配しないでよ。弥生くんみたいに芙祐ちゃん奪いに来たりはしないから」



ふっと、嫌味満点の笑みを浮かべる。



「でも芙祐ちゃんに用があってきたんだけどね」



「は?」



そう言うと、桜木慶太は芙祐のクラスの方まで歩き、「芙祐ちゃん」と慣れたように、教室にいた芙祐を呼び出した。




「どーしたの慶太くん?」



「これ、前言ってた過去問、持ってきたよ」



「!!わー、ありがとう」



芙祐は桜木慶太を見上げて、嬉しそうに笑う。

それを優しい表情で見つめる、桜木慶太……。


普通にむかつくんだけど。



……つーか、

芙祐は俺に気づけよ、このくらいの距離なら。


芙祐が教室の前のドアにいるとして、後ろのドアにいるくらいの距離だけど。



まぁ、芙祐は気づくこともなく。




第一希望が同じ大学な2人は、受験生らしい会話に夢中らしい。



俺は2人に近づいて、


「芙祐、今日放課後遊べる?」



「あ、ヤヨ。うん遊べるよ」



「じゃあまた放課後迎え行くわ」


「はーい」



にっこり、芙祐。


桜木慶太はそんな芙祐に「仲良いね」って笑う。芙祐の前では嫌味も感じさせない。



……桜木慶太って
なんで、いつもあぁなんだろ。




俺が見せつけるようにあがいても、



いつも余裕しか見えない。



俺は踵を返し、教室に戻った。











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