【完】もっとちょうだい。
「看護師になりたい理由?」


「そうそう。ヤヨちゃんは真面目だから、なりたいものにしっかりと理由求めてそうだけど」


そりゃ求めるだろ。
がちのまじで生きていくための将来の夢なんだから。
子供の頃のとはわけが違う。


あ、トンネル抜けた。


「あたしの志望動機は、友達に『芙祐はナースが似合う』って言われたからだよ」


聞き返した。
でもやっぱり、
友達から「ナースが似合う」って言われたかららしい。



「まじでか……お前」


「びっくりしたでしょ?」



そんな理由で、
高1からずっと
勉強頑張って大学入って、
まだ頑張れてんの?


……すご。


「きっかけなんて適当でもいいでしょ。本当になりたいかどうかは後からついてくるんじゃない?」



体のほとんどが適当でできてそうな
芙祐らしい言葉。


「あの子いま何してるかなぁー」


ぼそっと呟いて、車線変更。


「芙祐に看護師勧めた友達?」


「うん。小中が一緒でね、ずっとナースが似合うって言うから刷り込まれたんだよね」


「……それって、男?」



「うん、そうそう」


「それさぁ……」



……コスプレ的な意味じゃなくて?


ハンドルを握る芙祐の隣で
苦笑いが続く。


「でも今はナースしか考えられないよ。責任の重さを踏まえても、やりたい」



……うわ。
もうそれ以上かっこよくなんないで。


「芙祐はすごい」

「だからそんなことないってば。あたしの話聞いてた?」



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