【完】もっとちょうだい。
「今日すっごい暑いねぇ……海たのしみだね」
そう言いながら
日焼け止めをかばんに仕舞った芙祐は、
俺のほうをまじまじと見てる。
「ヤヨ、明るいとこで見るとけっこう腹筋ある」
フットサルの効果?って
首をかしげながら、
ツーっと触れるから
「やめろ……!」
指を弾いて、テントから脱出。
「あはは、待ってよ」
芙祐、めちゃくちゃ楽しそうに追いかけてくる。
熱された砂に、あちちとか言いながら。
「……かわい」
「なんか言った?」
「なんでもない」
「聞こえたけどね」
「うざ」
抱えていた浮き輪を
いたずらっぽく笑う芙祐の頭からかぶせる。
腹のあたりまでおろして、
芙祐が両手で抱えて隣を歩いている。
道行く野郎達
「くびれやば」とか言って
じろじろじろじろ鬱陶しかったからな。
俺の女、見てんじゃねーよ
の一言でも言えたら
かっこいいのかもしんないけど。
そういうタイプじゃなくて
すいませんね。悪魔さん。
白い砂浜を歩いていく。
エメラルドグリーンの海の中では。
大学生っぽい男女グループが、
人をもち上げては海に投げ落として遊んでる。
「うわ、すご。すぶぬれ」
「芙祐も投げてやろうか?」
「ぜっったいやめてね」
化粧落ちるから嫌だって。
そんなん
すっぴんでいいじゃん。可愛いんだから。
とも、言えなくて
すみませんね。