【完】もっとちょうだい。
ちゅ、って一瞬、
ほんっとに一瞬、唇が重なった。
「ヤヨちゃ」「しー!」
ヤヨは唇の前で人差し指を立てて、静かにしろって……。
「だって今キスしてくれた。廊下なのに」
「人目盗んだ……はずだから」
「へへ、へへへ」
ニヤけるあたし。
頭ポンって叩かれた。
「満足?」
「とっても」
「ふーん」
「あ、ヤヨちゃん赤い。ほっぺ赤い」
両手でほっぺを包んだら、
「やめろ」
って、そっぽ向いた。
「ふふっ。だいすき。愛してる、ヤヨ」
「くっつくな!まじでTPO拾ってこい」
「もっかい」「こんなとこでするのはもう一生ないから」
サクッ。斬られた。
でも、嬉しい。
嬉しい嬉しい嬉しい。
「抱きつくな!」
また怒られた。
許してねだーりん。