【完】もっとちょうだい。
やばい。ドキドキしっ放し。
そのままダーツの部屋にたどり着いたけど。


「適当に三回放って。はいダーツ」



って矢みたいなの3個受け取ったよ。



ダーツの機械の設定すら早業すぎてよくわかんなかったけど、COUNT UPっていうやつ。なんだそれ。



あたしはちゃんと的を狙って、投げた。
大真面目だよ。



カツン。的の外に当たって落ちたから。もう一回。だめだ、もう一回。


うん、なにこれ。


「的が逃げてるんじゃないかな?」



「……まじか」



ヤヨが肩を震わせてる。
笑うなんてヒドイ。



「ヤヨやってみて?」



このくねくねする矢じゃ、絶対、的になんか刺さらないから。



ヤヨが構えて、狙い定めてる。
あ、かっこいい。



真剣な横顔とか。
慣れた立ち方とか。
かっこいい。ヤヨ。


ヤヨが矢を放ったら、ピュイン!ってダーツの機械から音がした。




「真ん中入ってるじゃん、ヤヨ!」



3本中3本だよ。なにこの人。
スナイパー?



「ヤヨうまーい……なんで?」



矢に何か仕掛けが?


くねくねと矢の先触ってみたけど、特に変わったところは何もないね。不思議。



「バイト終わって先輩たちと遊び行くとすればボーリングかこういうとこかカラオケとかだから」



「そうだった」



二年生の時の夏休み、ヤヨって昼夜逆転するまでバイトして遊んでた人だった。


遊びって言っても健全な方のね。
真面目だからね、ヤヨは。





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