【完】もっとちょうだい。
完全に怒ってる。


けどなんか、そんな顔も可愛いなとか
アホなことも考えていたりして。


「明日模試だもん、早く寝よ」


そう言って芙祐は、俺の腕を引く。


で、
このあとこいつなんて言ったと思う?



「一緒に寝よ?」



化粧気ないつるんとした顔で、上目遣い。
何その反則技。



「……や、俺ソファでいいし」



目をそらし、
腕を離そうとするけど、余計に力を入れて握られて、



「そんなの寂しい」



って、芙祐は簡単に言う。



いや、俺はそんなの我慢できるわけないんだけど。


どうせこっちの事情一切わかってないで言ってるんだろ、こいつ。



「そんなにイヤ?」



泣きそうな顔はぜったい反則。



「……わかったよ」



無だ。無になれ。


ベッドに2人で入り、アイボリーのふかふかの布団をかけて。


花みたいな匂いがする。
これ、いつも芙祐の髪からする匂い。



ドクドク心臓が鳴る。
すぐ隣のぬくもり。


一晩耐えるのか?
なんの修行だよ……。



「おやすみ」


何事もないように装って、挨拶だけして

そっこー、俺は壁がわを向く。



「ふふっ、ヤヨだ」



芙祐の声が背中から聞こえる。


豆電球がついた、オレンジの部屋。



「ヤヨ、」



つんつんと、背中を突かれた。


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