【完】もっとちょうだい。
速足で、駅に着いた。
それまで無言だったくせに、
改札の手前でヤヨが言う。
「なんでお前、喧嘩のたびにあいつと仲良く話してんの」
「偶然会っただけだよ」
「あのさぁ、」
すうっと息を吸った、ヤヨ。
何か言おうとしたのに、そのまま息を吐きだした。
「何?」
「いや、もういい。さっきは、飽きさせて悪かったな」
嫌味っぽい言い方で、吐き捨てるヤヨ。
慶太くんと話していた間に下がっていた
怒りボルテージ、上がってきたかも。
「元カノからクリスマスプレゼント貰うのって、あたしが慶太くんと話すより、罪深くないの?」
「……あれ、モグにじゃん」
そのモグちゃん宛のプレゼントを、
あたしがあげた緑のマフラーの1000倍嬉しそうに見てたくせに。
でも、深呼吸して、
何とか、言葉にしないように、
平和に、乗り越えようとこらえていたら。
「……めんどくさ」
世界一、彼女に言ってはいけない言葉、
聞こえてきたから。今。