平和を愛する男

ぐっと拳を握りした男は、涙を浮かべ、彼女を見据えた。

「一緒に過ごしたこの2年間は一体なんだったんだ?」

くずおれるようにしてベンチに座り込む男を、彼女は愛らしい丸い目で見つめる。

「君にとって、俺はその程度の存在だったってことなのか?」

男の問いに答える術を持たない彼女は、一緒にいた仲間達に習うようにして方向を変えた。

「待ってくれ!」

立ちあがった男の声に驚いたのか、地面をつついていた鳩の群れが一斉に飛び立つ。

「あっ……」

仲間達と共に去って行こうとする彼女を見て、男は叫ぶ。

「行かないでくれ!」

響き渡る声は、もう遠ざかっていく彼女には届かない。

「戻って来い!愛してるんだ!!君なしじゃ、俺は……っ……ああ……頼む……」

小さな彼女の姿が遠ざかり、ついには見えなくなってしまうと、男はがっくりと地面に膝をつき、体を震わせて泣きじゃくり始めた。



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