空色(全242話)
どうしてこうなった?
私がトップに立てるなんて、何かがあったに違いない。
あの嘘だらけの風俗雑誌のせい?
それとも最近、新規の客が多いから?
いや、それよりも十和。
十和が現れた事が、原因かも知れない。
短い間隔での来店。
そして延長。
十和が私の売上に貢献しすぎてる。
私とそう歳も変わらない人間が、どうしてそこまでお金を出せるんだろう。
奴は一体、昼間何をして……
『美香ちゃんアユさん、お疲れ様です』
午前0時。
連休明けの一日目は忙しく、駆けるように過ぎていった。
息づく間もなく、幸成の車が目の前に止まる。
『幸成くんもお疲れ様~!』
なんて嬉しそうな笑顔なんだろう。
美香は最近、前にも増して綺麗になった。
悔しいけど、幸成のお陰でもあるんだろうな。
『ねー、知ってる?』
後部座席に乗り込むと同時、幸成に切り出す美香。
『アユ、奈美に勝っちゃったんだよー! すごくない?』
って、勝ってないし。
ただ並んだだけだよ。
きっとまたすぐに差をつけられてしまうだろうし、今回が偶然に客が多かっただけの事だ。
『俺達の間でも持ち切りっすよ。 今までずっと、奈美さんがトップだったみたいですし』
バックミラーに写る、怒りを隠すように引き攣った笑顔。
どう見ても、その笑みは私に向けられていた。
ゾクッと背筋に悪寒が走る。
『モテる女は辛いっすねー。 ね? アユさん』
……ああ、辛い。
辛いよ確かに。
でも一番辛いのはあんたのその視線だよ。