空色(全242話)

電話なんて要らない。
声だけじゃ足りない。

会いたい。
会いたい会いたい。

十和の、笑顔が見たいよ……


もうひと月。
十和は、お店には来ない。
私に、会いに来てくれない。

初めて気付いたんだ。
私は、十和を知らない。

何処に住んで、どんな仕事をしてるのか……
一切知らないんだ。



そんな十和に会う方法は、これしか思い浮かばなかった。
古臭い手だけど、待ち伏せしかないと。

以前聞いた、十和のいつも通る道で……


『暗い……』

昼間だというのに、空はどんよりと暗い曇り空。
雲が近くに感じる。

不思議と私の見る空は、いつも浮かない様子。

青空が見れた日は、十和が隣にいた。

十和がいないと一生、晴れた空が見えないような気がして、なんだか怖くなった。

いつになれば、十和は目の前を通るんだろう。
もしかしたら今日は通らない?
明日は?
明後日は?


やばいな。
考え出したらキリがないよ。




サァー……

ついに雨まで降り出してしまった。
幸い屋根のある所を見つけられたけど、髪もメイクも雨にうたれてボロボロ。

今日は、出直した方がいいかな……


『アユ?』

……え?

『何やってんだよ!?』

突如、現れた人物に上手く頭が回らない。

まさか、本当にここで会えるなんて思ってもみなくて……

『十和……私ッ』

十和に言いたい事、いっぱいあったはずなのに、今は何も浮かばない。

それどころか、頭がクラクラ……
目が回る。

『こんなびしょ濡れで…… 何考えてんだよ!!』

珍しー……
十和が怒鳴ってる。

でも、声が遠い。
それに、視界が……暗い。

『ッアユ!?』

私、どうしちゃったんだろう……
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