空色(全242話)

十和の笑顔を見てると、少しだけ強くなれる。

十和を愛した私は弱くなったけど。
十和に愛された私は、それを帳消しにする位、強くなった。

何も恐いものは無いんだって、思えるようになった。

とりあえず、十和の傍にいる時は……








『おはようございます』

楽しい時はあっという間。
すぐに日常へと戻される。

『お休みはどうでした? 休まりました?』

私を乗せたと同時、エンジンのかかる乗用車。

寒さにかじかんでしまったのか、幸成はエアコンの吹き出し口に両手をかざす。

休み、かぁ。

『別に。 ゴロゴロしてただけ』

十和とのキス。
今、思い出しても顔が熱くなる。

あんなキス、された事ないもの。

『つれないっすね。 嘘つくなんて』

……え?

『俺が何も知らないって思ってるでしょ』

幸成、何を言ってるの?
何が言いたいの?

『十和さんと2人で、何処に行ってきたんです?』

……バレてる!?
何で?

昨日はわざわざ、遠い所に出掛けたのに!

口止めするか。
ごまかすか。
2つに1つ。

幸成に口止めできる自信がない。
だったら……

『て、適当な事言わないで。 意味解んない』

適当にごまかすしかない。

十和との事は、誰にもバレちゃいけないの。

絶対に、誰にも……

ってか、さっきから手ばっか暖めて、車を動かそうとしない。

『幸成。 そんな事より遅刻……ッ!?』

「しちゃうよ」と続けようとした口は、大きな手に覆(オオ)われ、続きを失った。

幸成は運転席を半分倒した状態から、身を乗り出し、後部座席へと移ろうとする。

こ、恐い。

『十和さんと付き合ってんすか?』

『ん、ぅッ……』

口を塞がれたら、否定も肯定も出来ないじゃないの。
この、馬鹿男!!

『あ、ははははッ! こりゃいーわ!』

……は?
何? いきなり。

『ご愁傷様です』
< 189 / 243 >

この作品をシェア

pagetop