空色(全242話)
十和の笑顔を見てると、少しだけ強くなれる。
十和を愛した私は弱くなったけど。
十和に愛された私は、それを帳消しにする位、強くなった。
何も恐いものは無いんだって、思えるようになった。
とりあえず、十和の傍にいる時は……
『おはようございます』
楽しい時はあっという間。
すぐに日常へと戻される。
『お休みはどうでした? 休まりました?』
私を乗せたと同時、エンジンのかかる乗用車。
寒さにかじかんでしまったのか、幸成はエアコンの吹き出し口に両手をかざす。
休み、かぁ。
『別に。 ゴロゴロしてただけ』
十和とのキス。
今、思い出しても顔が熱くなる。
あんなキス、された事ないもの。
『つれないっすね。 嘘つくなんて』
……え?
『俺が何も知らないって思ってるでしょ』
幸成、何を言ってるの?
何が言いたいの?
『十和さんと2人で、何処に行ってきたんです?』
……バレてる!?
何で?
昨日はわざわざ、遠い所に出掛けたのに!
口止めするか。
ごまかすか。
2つに1つ。
幸成に口止めできる自信がない。
だったら……
『て、適当な事言わないで。 意味解んない』
適当にごまかすしかない。
十和との事は、誰にもバレちゃいけないの。
絶対に、誰にも……
ってか、さっきから手ばっか暖めて、車を動かそうとしない。
『幸成。 そんな事より遅刻……ッ!?』
「しちゃうよ」と続けようとした口は、大きな手に覆(オオ)われ、続きを失った。
幸成は運転席を半分倒した状態から、身を乗り出し、後部座席へと移ろうとする。
こ、恐い。
『十和さんと付き合ってんすか?』
『ん、ぅッ……』
口を塞がれたら、否定も肯定も出来ないじゃないの。
この、馬鹿男!!
『あ、ははははッ! こりゃいーわ!』
……は?
何? いきなり。
『ご愁傷様です』