空色(全242話)

諦めは同意と同じ。

私達が普段、何気なくしてる見て見ぬふりも、
同意と同じになってしまうかな……


『送ってくれてありがとう。 また明日ね?』

幸成の見せた一瞬の怒りから、車内は無言。
そのまま、美香はマンションへと帰ってしまった。

ここから自分のアパートまで、この雰囲気の中にいなければならないと思うと、どうにも気が重い。


『ねー』

と、突然。
幸成が口を開いた。

『俺の思った事。 余計な事でしたか?』

……なによ。
珍しく弱気じゃない。

いつも、人の迷惑なんて気にしないくせに。

『別に。 あんたなりに私達をなんとかしようって考えてくれたんでしょ? それは、美香もわかってるよ』

ちょっと調子狂うじゃん。

『ははっ、自分の事ばっかっすよ。 俺が自由に動くために、オーナーが邪魔なんすよ』

『……あっそ』

何よ何よ。
せっかく見直したのに。

何だか損した気分だよ。

『ま、とりあえずは大人しくしときますよ』

フッと笑みを見せ、バックミラーから視線を外す幸成。

それでも、目は何かを企(タクラ)んでいるような目だった。
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