空色(全242話)

久しぶりに入った十和の腕の中は、暖かくて、安らぎをくれた。

私の過去も今も、これからも……
全然、受け止めてくれるような強い包容力。

もうそれが無くちゃ駄目なんだって、心底思った。

でも、それだけじゃ足りなくて、この間のキスみたいな深い繋がりが欲しくて、促(ウナガ)すように頬を寄せてみる。

『髪が当たってくすぐったいよ』

……鈍感。

『うん? 何か怒ってる?』

怒ってるわけじゃないよ。
ただ、十和が鈍いから……

『何もない。 もっかい飲み直そ』

鈍感な十和にせめてもの反抗。
腕から逃れて、床に置かれたビールを取る。

『十和も飲んだら?』

『あ、うん。 そうだね』

10本でも20本でも飲んで、酔っ払ってしまえ。

そしたら、少しは積極的になるかもだし……

『……ッあはははは』

『へ?』

突然の笑い声に、キョトンとしてしまう。
一体何!?

『あー、ゴメンゴメン』

目を擦りながら必死に笑いを堪えてるみたい。

私、何かした?

『ちょっと意地悪だった?』

『え? ん?』

何の事?
意地悪?

『はぐらかしたら、どんな反応するのかな?って思ったんだけど。 アユ、怒っちゃったから可笑しくて!』

な、な!?
何それ!

『ひ、ひどい!! 馬鹿みたいじゃん、私!』

私の気持ち、知っててからかってたの!?
どんな反応するか見てたって事!?

『何でそんな事ッ……んぅッ!?』

まだ言葉の途中なのに、十和が唇を重ねるから、変な声が……ッ

『何でって、アユからしてくれるかな……って』

キスの合間合間に話すから、途切れ途切れになった言葉が、妙に色っぽくて。
体に熱がこもったように熱くなる。

『ッ……』

優しいだけじゃない。
顔に似合わない、強引なキスに、頭の中は靄(モヤ)がかかったように朦朧(モウロウ)となっていった……
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