空色(全242話)

キスしたい。
触れたい、触れられたい。

そんなふうに思ったのは、本当に初めての事だった。

それが、例え罪になるとしても……



《プルルルル プルルルル》

と、私の決意をよそに、机の上の携帯が鳴る。

『十和……出ないの?』

私とは音が違う。
これは十和の携帯だ……

『出たくないけど、出るよ』

十和は、少し不機嫌そうに言うと、はだけた私の胸元にシャツをかけた。


『はい、笹森です』

あ、そういえば。
十和のフルネーム、今まで知らなかった。

笹森十和……かぁ……
うん、珍しい苗字だ。

『うん、うん。 そうだね』

でも、誰かもそんなような苗字だったような……
誰だっけ?

『じゃあ、頼むよ。 幸成くん』

……って、幸成!?
何で、こんな夜中に幸成から?




『ごめん!』

しばらくして電話を切った十和。
まず1番にしたのは、両手を合わせて謝る事だった。

『もう、気持ち変わった……よな?』

ってか「さあ! やり直そうか」なんて、ちょっと嫌だし、
また次回に仕切り直したほうが……

『次回からは、電源切るようにします……』

あはっ、何「しょぼーん」てなってんの。
可愛すぎなんだけど。

年上のくせに。

『それより、幸成だったんでしょ?』

『あ、うん。 店やオーナーの様子とかを、ちょっとね』

……おいおい。
そんな情報、外部に漏らしちゃっていいの?

幸成、危ないんじゃない?

『何難しい顔してんの』

コツンと、額に指を弾かれる。

『大丈夫だよ。 アユや幸成くん達に何かあったら、絶対に助けにいくから』

……うん。
大丈夫だよ。

ちゃんと十和を信じてるもの。

『だからなるべく、オーナーを刺激しないように。 了解?』

でも、この胸騒ぎは一体……
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