空色(全242話)
ゾロゾロと大部屋に向かう女達。
誰一人泣かない。
誰一人逃げない。
【同意の上だろ】
頭の隅っこで、幸成の怒鳴り声が蘇る。
本当だね。
誰一人、逆らおうともしないもの。
オーナーに抱かれるのが当たり前なんだって、皆がそう思ってる。
『私ね、幸成くんを想う事にする』
と突然、美香がポツリと呟いた。
『幸成くんだと思えば、少しは嫌じゃなくなるかも……』
現実逃避……
でも、今はそれが一番の方法かも知れない。
私も、十和だと思えば、ある程度は我慢できるかも。
はは、かなりヤバイ。
妄想族だね、私達。
『何、馬鹿な事言ってんすか?』
……え?
『幸な……ッ!?』
思いもしない人物が現れた事に驚き、声を上げる。
しかし、すぐに大きな手が口元を塞ぐように被さった。
『俺とオーナーを重ねるなんて失礼っすね。 こう見えて俺、女を抱く時は優しいんすよ?』
意地悪で、でも優しい笑顔に、知らず知らず足を止めていた。
でも、すぐに後ろの人にぶつかられて、ハッとする。
行かなきゃ。
オーナーの元に……
『駄目っすよ』
『……え?』
『本当に十和さんを好きなら、行っちゃ駄目だ』
なによ。
何であんたが真剣な顔すんの。
行かなきゃ、後で酷い目にあうのよ?
あんただって、私を見逃したら……
『美香ちゃんもおいで。 本当に、俺と恋愛する気があるならね』
もうグチャグチャ。
どうしたらいいの?
このままオーナーに抱かれる?
それとも、幸成を信じる?
『ごめん、アユ』
……美香?
『私、幸成くんに嫌われたくないよ』
『美香……ッ』
幸成の手を取り、代わりに私から離れていく美香。
『アユはどうします?』
どうする……ッ?
どうするの…………ッ!?
『行くよ、私も』
もう、どうにでもなれ!