空色(全242話)
なんて事を……してしまったんだろう。
オーナーに、逆らった?
この私が?
何で私が?
【十和さんが好きなら】
……そうか。
十和の顔が、脳裏に浮かんだからだ。
『……ッ……ぅ……ッ』
幻聴?
現実?
誰かが泣いてるような。
大部屋……かな。
そっか。
私と美香以外は、オーナーの所だものね。
『アユ…… 幸成くんは、大丈夫かな』
微かに震えた唇を動かし、美香が言う。
『大丈夫…… きっと』
この店で一番、使用する機会のない狭い個室。
幸成は、私達をそこに隠すと、自分の仕事へと戻っていった。
監視室へ……
オーナーが私達に気付く事がないよう、大部屋を監視するためだと言っていた。
そこまで犠牲になってくれる理由は何だろう。
ただ単純に私への好意?
本当にそれだけ?
それに、あんなに敵意剥き出しだった十和と、今ではすっかり打ち解けてる。
……相変わらず、食えない男だ。
『終わったよ』
隠れる事、約3時間弱。
再度、個室に現れた幸成は、バツの悪そうな笑みを浮かべていた。
『何よ、それ』
手には……
CD?
DVD?
『別に? 何でもないっすよ?』
何でもない?
そんなごまかしが通用すると思ってんの?
そんなもの、さっき持ってなかったじゃない。
『それより、早く帰った方がいいですよ? 2人が抜けた事、誰かに気付かれる前に』
一体、何を企んでるの?